「施工物はいつか崩れる」というやり方から「生態系を復元させる」発想へ。

 

今までの登山道を直すときは「土木工事」の考え方が使われてきました。
規則正しい配置の階段が出来たり、コンクリートや石畳路面になったり、

およそ自然界に存在しない構造物が施工の主流でした。

               

     

 

 

ですが、それらが自然に受け入れられているかというとそうではないように見えます。

自然を成り立たせている、風邪が、水が、寒さが、また利用する人間が、施工した構造物を壊す働きをしています。

「土木工事とは自然と相反するもの」という雰囲気が出来、時間が経てば壊れてもしょうがない、という流れになっています。


ですが、施工後、崩れることなく自然が復元していく場所もあります。
施工物が崩れる施工と自然が復元する施工の違いは何でしょうか?
大雪山・山守隊は、その理由を観察し、理解し、実践していくことで、
自然に受け入れられる施工が実現できるのではないか、と考えています。
そしてそれを可能にする発想があります。

 

「近自然工法」という発想。
これは侵食を止め、生態系を復元させる考え方です。
「生態系の底辺が住める環境を復元させれば、おのずと生態系のピラミッドが出来上がる」という発想です。


自然に近い工法・・・自然界の構造物を理解し、その形を再現すること
自然に近づける工法・・・施工後、生態系が復元し、自然が再生していくこと


自然に合った施工が出来るとこういう感じに・・

 

大雪山・愛山渓での施工 2005年施工前               施工直後                    10年後

小笠原諸島での施工 2014年施工前                 施工直後                    2年後

小笠原諸島での施工 2016年施工前                 施工直後                    2年後

徳島県剣山での施工 2016年施工前                 施工直後                      1年後

小笠原諸島での施工 2017年施工前                施工直後                        1年後

近自然工法を実践するものにとって一番うれしい言葉
「どこを直したの?前からこうだったんでないの」
正しく施工できた時には、施工したことがわからないほど自然に馴染んでいきます。

 

「施工後、自然が復元していく場所」をよく観察すると、侵食が止まり、
生態系が復元する「きっかけ」を作ることができた場所がそうなっていることに気が付きます。
言われてみれば当たり前の発想ですが、現場でそれを実践するには
膨大な自然観察と未来を創造できる感性が必要です。

 

      

 

 

 

 

 

資材はできるだけ付近にあるのもを使います。

ですが、自然素材以外はダメ、ということではありません。

プラスチックやコンクリートでも自然復元の手助けになれば補助的に使用します。

 

近自然工法を実践するには

「膨大な観察から生まれる自由な発想」が不可欠です。
自然を理解することは簡単ではありません。


   

 

 

 

山守隊のメンバーには、近自然工法を15年以上実践し、記録し研究している者がいます。
自然を観察すると、毎年新しい発見があり、新しい施工方法が見つかります。
これからの山を育てるために「きっかけ」をたくさん作っていくこと、が求められています。


      

 

 

 

 

 

もう一つ、整備によって変化するものがあります。
施工した人の、山に対する感情です。


今までの登山道整備と言えば、大変な労力が必要で、

つらく、楽しいとは思えない場合が多くありました。
ですが近自然工法による「きっかけ」作りは、同じ登山道

整備でも全く違った印象を受けます。
施工した場所が復元していくと、なぜか「嬉しい」のです。


つらさも使う体力も今まで以上のことが多いのに、「嬉しい」と思える。

その感情の中にこそ自然と人間が共存できる「きっかけ」があると思います。
大雪山・山守隊は、近自然工法を実践していくことで、

自然保護と人間の利用の関係をより良いものにしていくため、行動していきます。


「歩きやすく」する整備から「育てる」整備へ。
山を守りながら育て、山に教えられて育っていく団体になりたいと思っています。